一般的には失敗らしき時期もあったが、一度もドンゾコだとは思っていない。肉汁餃子で勝負に出た 1号店で、10年間の長いトンネルを抜けたと感じた。
餃子居酒屋のパイオニアとして、国内132店舗(2023年7月時点)を展開する肉汁餃子のダンダダン 。株式会社NATTY SWANKYホールディングスで代表を務める井石 裕二氏に、失敗や結果の出ないときのエピソードを交え、氏が大切にする考え方を聞いてみた。
学生時代はアルバイトに楽しみを見出した
─学生時代は何かに打ち込んだり、勉強に励んだりしましたか?
勉強もスポーツも特に打ち込んだこともなく、普通の学校生活でしたね。大学も行きたかったわけではなかったですが、とりあえずの流れで進学はしました。ただ、一応は入学したものの、やはり面白さや通う意味を見出せなかったんです。また、学費を払っているにも関わらず、いきなり休校になることもかなり多くて。計算すると、1コマあたり5,000円の受講料も返金されないんですよ。選んだ大学がいけなかったのかもしれませんが、バカバカしくて1年でやめてしまいました(笑)。
─特に楽しいこともなく、割と不遇な学生時代を過ごされたと
アルバイトはかなり楽しみながら取り組んでました。例えば、水産加工場で鮎にひたすら串を刺す流れ作業のアルバイト。「そんな単純作業つまらない」と思う人もいますが、私はどんな仕事でも楽しめるんですよ。効率を考えて、「どうやれば早くキレイに刺せるか」と、ベテランの人を見ながら研究してました。実は、仕事って表面だけで選り好みをすると、業態によって面白くないと感じてしまう。楽しいか不満に思うかは、仕事への向き合い方だと思います。
「どんな仕事でも向き合い方によって面白くもつまらなくもなる。それは好きな職種だったとしても長期的に見れば同じですよ」
─確かに、辛いのは「好きな仕事に就けてないから」という人もいますよね
これは私の捉え方ですが、好きな業種だから面白いのではなく、考えながら働くからこそ面白いんですよ。何も考えずに働くだけでは、好きな仕事でもそのうち楽しめなくなります。好きな職種でも苦労はするし、壁にぶち当たることもあるじゃないですか。ですから、「好きな仕事なら面白い」ではなく、「考えるほど好きな要素が見つかる」が正解だと思います。
まったくスケールできなかった創業からの10年間
─井石さんは、どのタイミングで起業を志したのでしょうか
はじめて起業を意識したのは高校生の頃でした。ただ、その頃は「これがやりたい」とか「いつ頃から始める」ではなく、漠然とした感覚だけです。おそらく、転勤族の父を幼少期から見ていて、この働き方は無理だと思ったのかなと(笑)。会社や上司の指示で働くよりも、自分でなにかを生み出す働き方に興味を持っていました。
─数年ほど会社に勤められていたそうですが、その後どのような流れで起業したのでしょうか
元々は、私が通っていたラーメン店で働く田中(現NATTY SWANKYホールディングス副社長 田中竜也氏)と仲良くなったのがきっかけです。彼も独立志向だったので、それなら一緒にやろうということで共同創業しました。当時は私が2軒のバーを運営し、田中がラーメン店を2店鋪というスタイル。その10年後、スケールできるビジネスに挑戦しようとビジネスモデルを餃子居酒屋に変更しました。
失敗の捉え方のおかげでIPOにたどり着いた
─開業から着実に店舗数を伸ばし、2019年には株式上場も果たしています。順調に見える井石社長にとって、これまで大きな失敗はあったのでしょうか
何度もしてると思うんですが、どれも失敗と感じたことがないんです。例えば、最初に田中と続けた4店舗の飲食事業は、スケールどころか本社経費も捻出できませんでした。ビジネスという観点では失敗でもあるし、キャッシュフロー的にはドンゾコとも言えるかもしれません。ところが、ダンダダンへの転身によってIPOまでたどり着いたわけですから、必要なプロセスだったという見方もできますよね。
─失敗やどん底は、その事実に対する向き合い方でしかないと
おっしゃる通りです。失敗とは、そのタイミングを結果にした場合に起こる現象にすぎない。そこで終了すれば、確かに失敗という表現になるかもしれません。一方で、失敗らしきことも活かせば単なるプロセスにすぎないんですよ。だからこそ、その瞬間だけに一喜一憂せず、すべてを客観的に判断したほうが良いと思います。
「上手くいかないところで止めるから失敗なんです。私も餃子居酒屋で勝負に出なければジリ貧で終わったと思います」
─考え方を大切にする井石さんから、失敗した人やドンゾコを感じている人へのアドバイスはありますか
まず、起きたことをすべて素直に受け止めることです。失敗をどれだけ悔やんでも、他人のせいにしても現実は変えられません。何がいけなかったのか、どうすれば状況を変えられるのか分析し、失敗を活かすマインドが重要だと思います。広い視点で分析と改善を行い、その失敗を起点(過去)として行動すれば良いんです。
─「失敗とは、その瞬間を結果にしたことで起こる現象」と井石社長は言う。創業からの10年間、ラーメン店もバーもスケールできず、売り上げも思うように伸びなかった。失敗とも言える状況を活かし、130店舗以上のダンダダンを構える規模にまで成長させた。多くのビジネスパーソンが、“失敗や困難ほど視野を広く持つ心構え”を再確認できるメッセージではないだろうか。
社名 | 株式会社 NATTY SWANKYホールディングス |
住所 | 東京都新宿区西新宿1-19-8 新東京ビル7階 |
代表 | 井石 裕二 |
設立 | 2001年8月1日 |
HP | https://nattyswanky.com/ |