メディカルローグ株式会社|野口 宏人

全員に辞表を出されたあの日。自分という存在を否定するほどの絶望に追い込まれた。どん底から脱出できたのは、目の前の事実をすべて受け入れ、未熟な自分に向き合えたから。

医学研究アプリの開発シェアトップを誇り、デジタル化によって医療のさらなる進化をサポートするメディカルローグ株式会社。日本の医学界を活躍の場とする野口宏人CEOに、ドンゾコメディアでしか聞けない失敗エピソードを語っていただいた。

事業の解像度が低かった

─これまでに経験された失敗エピソードをお聞きしたいのですが

私が医療機器メーカーからの転職を考えていた頃、とある中国人の方から共同創業の誘いを受けたんですね。事業内容は、日本での医療を希望している中国人をサポートする医療ツーリズム(医療観光)でした。しかし、彼には病院とのパイプがなく、様々な病院と繋がりのある私に声をかけたということです。

苦労して病院と交渉し、中には大きな病院も受け入れ体制をとってくれたにも関わらず結果を出せなかった。病院側からも「いつ患者さんが来るの?」という状態が続き、結果的に事業を断念しました。「患者さんがたくさん来るだろう」という、経営でのもっとも重要な集客の部分を楽観的に考えすぎていた自分の至らなさを悔みました。

傲りの感情がもたらした最大の失敗

─では、いちばん大きかった失敗はなんでしょうか

大きな失敗は二度あります。ひとつは、わからないことに手を出して大きな負債を背負ったこと。ある知人から、仮想通貨に投資したいという相談を受け、詳しい人を紹介したところ数千万円の金銭トラブルに発展してしまったんです。私は法的に無関係でしたが、「野口の紹介者だから投資した」という言葉に責任を感じ、結果的に肩代わりする選択をしました。詳しくないもの、わからないものに中途半端に関わったが故の失敗です。

ふたつ目は、私の傲り(おごり)が招いた大きな失敗があります。以前の私は非常に高圧的で、ミスをした社員を一方的に恫喝してしまう、人間性に劣る経営者でした。その結果、スタッフ全員に辞表を出されてしまうというクーデターを招いてしまったんです。

「全員から辞表を突きつけられ、自分を消してしまいたいという感情に追い込まれた」

─全員が同時に辞めてしまうというのは危機的な状況だと思います

なんとか強がってはいましたが、相当きつかったです(笑)。本当に追い込まれていて、「自分なんてこの世に必要ない人間かも」と、最悪の思考もよぎってました。社員への対応を見れば当然の結果かも知れませんが、あまりにも大きすぎるトラブルでしたね。

失敗したことで自信が過信だったと気づけた

─どのように大きな失敗から立ち直ったのでしょうか

改めて行動を分析すると、すべてが他責だった自分に気づきました。もちろんスタッフのミスもありますが、オペレーション自体に欠陥があったのです。指示が明確でなかったり、マンパワーに頼ってしまったりと、いくつも問題が出てきました。仕組みが構築されていないのであれば、人為的なミスの大半は社員ではなく経営者である私の責任です。

─自責に切り替えるために、他責の原体験に目を向けたということですか

その通りです。私は大学生のアルバイトで学生店長を経験し、就職先では大学病院とのパイプも構築してきました。このような過去の実績が、自分の能力を過信していたと気づけたのです。その失敗をきっかけに、今では何事も自責で考えられるようになり、スタッフへの心配りもできるようになりました。

失敗から目を背けず、直視してすべてを受け入れる

─失敗した人や、失敗への恐れから行動を躊躇している人へのアドバイスをお願いします

まずいちばん大切なのは、失敗しても必ずやり直せると自分を信じること。誰でも失敗すれば辛いですし、逃げ出したくなることもあります。私は最初の事業が上手くいかず、その後も失敗を繰り返してきました。一度は倒産の危機まで追い込まれましたが、それでも2022年度は過去最高の売り上げを達成したのです。

「失敗を感情的に捉えずに、客観的に分析して課題を見つけ出すことが重要」

─具体的にどのような対処をすれば良いのでしょうか

まず不得意を含め、わからないものには絶対に手を出さないこと。特に、家族や仲間のような近しい関係でも注意してほしいと思います。私の仮想通貨の失敗が良い例ですが、これは生きる上でも非常に大切です。

もうひとつ、トラブルには一度すべてを自責として振り返ってみることです。私の場合であれば、「高圧的にスタッフを叱りつけていないか」や「自分のマネジメント力が低いのでは?」など、冷静に深掘りしました。そして気づいたところはすべて猛省し、二度と繰り返さないと決めることです。客観的に失敗を分析し、問題点を改善すれば少しずつでも成長の道が見えてきます。これは私の経験からも間違いありません。

これからも失敗するかもしれない。それでも冷静に問題と向き合えば、解決の糸口は必ず見えてくると語る野口CEO。これは経営者だけでなく、多くの社会人にとって問題解決の重要なプロセスになるのではないだろうか。

社名メディカルローグ株式会社
住所東京都港区元赤坂1丁目7番18号 メットライフ元赤坂イースト107
代表野口 宏人
設立2015年5月18日
HPhttps://m-d-l.co.jp/
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