20億の特別損失を背負っても、あきらめずに会社を立て直した。あらゆる失敗を何度も経験したが、そんなものはどうでもいい。大切なのは挑戦する熱狂と、成功の喜び。
2001年に放映された「マネーの虎」に出演。冷徹の虎として、一躍メディアの顔となった南原竜樹氏。一時は国内のフェラーリ販売シェアの50%を占め、外車といえばオートトレーディングルフトジャパン(現:株式会社LUFTホールディングス)とまで言わしめた。MGローバー破綻によるピンチからも復活を遂げ、今では若い世代をサポートする側に回って活動中。数々の苦難を乗り越えた南原氏から、ビジネスパーソンへのメッセージをお聞きした。
MGローバーの破綻により、20億円の特別損失を計上
─これまでのキャリアで、記憶に残るドンゾコ体験があればお聞かせください
みなさんご存知の通り、いちばんの衝撃はMGローバーの倒産でしょう。結果、20億の特損(特別損失)を出したわけですから。実は、ローバーが中国の企業に買われる予定があったのに、土壇場でなくなってしまった。他にも大小問わず、失敗なんて何回も経験してますよ。メディアのイメージが強いのか、「南原さんはずっとうまく行ってますよね」と言われるけど、そんなことはない。イタリアのフィアット・ブラーボっていう車なんて、いけると思ったのに1台も売れなかった(笑)。飲食チェーンを買収した時は、5億の損失を出してますし。普通の人より失敗は多いんじゃないかな。
─車の印象が強い南原さんですが、飲食業に手を広げたのはなぜだったのですか
旅館を手がけたことがきっかけでした。ご縁で民事再生の旅館を買収して、苦労しながらコツコツ復活させたんです。おかげで「旅館再生の教科書」っていう本を出版するレベルにまで再建させましたよ。
「大切なのは、失敗を悔やむことじゃない。挑戦に熱狂して、失敗より大きな成功をすればいいだけ」と語る南原氏。
─旅館までやられてたのは知りませんでした
旅館をやってみると、改めて宿泊業って本当に大変。例えば料亭の場合、数時間のサービスで1人2、3万円をいただけますよね。これが旅館になると、部屋の清掃や食事の用意、温泉の管理、布団を敷くなど、まず業務が多い。その上、真夜中でも電話や苦情やらで24時間体制なんです。チェックインからアウトまで半日以上いるのに、わずか1、2万にしかならない。飲食のほうが、明らかに費用対効果が高いわけです。ちょうどその頃、寿司屋を売却したい人が現れて飲食にチャレンジしたんです。
第一線から退いた今、次世代へのサポートに回る
─これまでの失敗から得た学びがあれば、ぜひ教えてください
ローバーの失敗から立て直す時、もう車の販売には手を出しませんでした。将来的に車の販売台数は減ると確信してたし、改めてもう一度やりたいとも思えなかったし。新規事業に転身を決めて、まずは沖縄のレンタカー会社を購入。購入時は100台でしたが、最終的には4,000台を所有する規模にスケールできましたよ。医療系のアウトソーシング会社は、4,500人の社員数にまでなったしね。紆余曲折ありながらも、よくやったと思います。
─引き続き、様々な事業に挑戦される予定でしょうか
すでに大半の事業はバイアウトを済ませ、今は組織の先頭に立つのは辞めてます。年齢には抗えないというか、あらゆる経営者を見ても感じるんですよ。いつまでも居座るような老害にはなりたくないなと。ITやAIの進化を見ても、若い人だけで事業戦略を描ける時代でもありますから。第一線は彼らに任せて、今後は尻を叩く側に回りますよ。頑張る人のサポート役ですね。失敗の経験がそうさせたのではなく、彼らの成長が純粋に楽しくてしょうがない。
失敗の数より成功が多ければ、人生は勝ち
─南原さんが応援する若い世代も含め、失敗に悩んでいる人に向けてアドバイスをお願いします
大きな失敗を含め、私はあらゆる種類の失敗を経験してきました。そんな私だからこそ、悩む人に言えることがあります。それは、「失敗の数より成功した数が多ければ勝ち」。失敗したってことは挑戦したわけだから、それだけでも価値があります。何度でも挑戦して、成功の数が多くなるまでやればいいだけですよ。一度も失敗しないなんて、通常ありえないわけだから。事業の上で失敗しないってことは、石橋を叩いてる間に割れちゃったのと同じ。
─それは具体的に言うと、どういうことでしょうか
一定の売り上げはある。十分な給料も払えてるし、それなりの老舗にもなれた。それだけで十分と思う人もいるんです。そこそこ立派な家に住み、毎週のようにゴルフへ行く生活に満足してしまう。新たな挑戦に失敗すれば、その生活すら失いかねないリスクがありますよね。ただ、挑戦しないという選択は、永遠に成長できないことも忘れてはいけません。
「挑戦しないということは、ビジネスにおいては現状維持すらできるかわからない。時代についていけず、衰退するリスクも高いですよ」
─南原会長は、ずっと挑戦を続けてきた人として存じ上げてます。その結果、積み上げられたものは何だったのでしょう
積もったのは圧倒的な知恵と経験でしょうね。その一部を若い世代に伝えられたら、知見もスキルも加速度的に成長させてあげられると思ってます。彼らだけで始めたら遠回りするような知見をね、丸ごとパッケージで渡せるわけですから。今は、そんな思いで若い人たちの挑戦をサポートしてます。
─英国MGローバーの経営破綻によって、20億円の特別損失を計上。「うまくいってるイメージがあるけど、他にもたくさん失敗してますよ」と南原氏は言う。失敗は挑戦した証拠だし、挑んだからこそ成功もできる。特に、未来を担う若い世代ほど、「失敗の数より成功した数が多ければ勝ち」という言葉を糧に挑戦してほしい。
社名 | 株式会社LUFTホールディングス(英語表記:LUFT HOLDINGS inc.) 旧社名)オートトレーディングルフトジャパン株式会社 |
住所 | 東京 :東京都港区西新橋1-5-9 ル・グラシエルBLDG.70 2階 名古屋:愛知県名古屋市東区東桜2-3-7 東カン名古屋キャステール 1階 |
代表 | 南原竜樹 |
設立 | 1988年2月12日 |
HP | https://www.luft-hd.co.jp/ |