納品したシステムがエラーを起こし、無報酬で問題を改善。迷惑をかけた意味では失敗だが、すべての原因が自分とは限らない。自分の課題を把握し、真摯に向き合えば必ず解決できる。
情報サービスの人材派遣をメインに様々な事業を展開する株式会社MIST solusion(ミストソリューション)。さらにはJリーグ・ヴァンラーレ八戸のサポート、銚子電鉄の相談役からFMラジオ局長など、幅広い場で活動中の田代貢一郎会長にドンゾコ経験を聞いてみた。
父と従業員を助けるために会社を受け継いだ
─これまでの経験で味わった失敗や悩みなどをお聞きしたいので、まずは田代さんが起業した経緯からお願いします
きっかけは、自分の父親です。父は情報サービスの経営をしてましたが、バブル崩壊の煽りもあって倒産してしまいました。その後は自分なりに動いてたらしく、いきなり父から連絡がきたんです。改めて会社を立ち上げたいが、倒産時の借金がそれなりにある関係で、自らは始めにくい状況なんだと。そこで私が立ち上げることになったわけです。
─すでに田代さんは燃料会社にお勤めだったそうですが、勤務先を辞めて参画したのですか
私は会社を立ち上げるだけで、一緒にやる予定はなかったです。ところが、その後に父が体調を崩したことで、経営できない状態になってしまって。当初は従業員を雇わない予定だったのに、一人だけ雇ってたんですね。父だけでなく、その人のためにも会社を潰すわけにはいかないなと。気がついたら「俺がやる」と言ってしまった(笑)。
システムエラーで1年間のタダ働き
─現在は、JリーグチームのサポートやFMラジオ局、農業など、幅広い活動をされてますが、これまでに大きな失敗はありしたか
失敗を気にしない性格なので、ほとんど覚えてないんですよ。その中でも、1つ記憶に残るエピソードがあるのでお話しします。私は以前、クレジットカードの不正利用を見つけるシステムを開発しました。お店で使われたカードが、数秒後に別の場所で利用されると、不正取引としてシステムが検知します。東京で使われたカードが、数分後に大阪で使われるなんてありえないよねという仕組み。ところが、いざ導入したらまともに検知できなかったんです。
「システムエラーの失敗は良い経験になりました。その後は注意するようになったので、同様のミスを防ぐことに繋がってますから」
─不正取引を発見できなかったということですか
不正取引は検知したのですが、まともな取引でも「怪しい」と誤認することがあったんです。結果、お客様にはご迷惑をお掛けしてしまい、正常に作動するまでの1年間はタダ働きで対応しました。
失敗は自分だけで起こるとは限らない
─システムに重大な欠陥があったのでしょうか
いや、実際には先方の使い方にも問題があって、私のミスとも言い切れないというか。先方は、過去にも同様のシステムを利用されていたんですね。そのシステムは、ランニングコストが高額だったので、私に改めて開発を依頼されたと。ところが、私が開発した後も以前のシステムと同じ使い方をしたため、結果的としてエラーを起こしてしまった。その後、新しいシステムに慣れていだだいて、正確に検知するようになりました。いずれにしても、1年はお手間を取らせたことは事実なので、私にとっては失敗と言えるエピソードです。
─その失敗から得た学びや、現在に活かしていることはありますか
元々あったシステムを作り変えるときに限っては、特に気を使うようになりました。新たなシステムのように、ゼロイチで良いものを生めばいいわけではないので。現状のシステム構造や、その上での課題や悩み、反対に使いやすい点などを把握する必要がありますよね。
失敗は課題だけにフォーカスする
─これまでの経験から、失敗した人や落ち込んでる人に向けてメッセージやアドバイスはありますか
これは経営者に限らず、あらゆる世代や職種にも共通しますが、基本的には失敗を引きずらないことですね。反省する必要はありますが、悩んだところで解決するわけではない。極端な言い方をすれば、失敗を失敗だと思わない人のほうが上手に立ち回ってると思うんですよ。
「世間では失敗と呼ぶことでも、私は気にしないので失敗を覚えてないんです。そのくらいの気持ちじゃないと、怖くて大きくチャレンジできないと思う」
─同じ失敗でも、捉え方や受け止め方で状況が変わることはありますね
おっしゃる通りです。先ほどのクレジットカードに関するシステム開発は、お客様にご迷惑をおかけしたという意味で、結果的には失敗とも言えます。ただ、あれだけの完成度でお渡しできたのは、自分だからできたという自画自賛の部分もある。起きたことは事実として受け止め、反省すべき点だけを改善すればいいと思うんです。何かがうまくいかなかったとしても、丸ごと自分の失敗とは限らないですから。表現はよくないかもしれませんが、「必要のない反省はしない」という視点があっても良いかもしれません(笑)
─失敗や悩みは、多くのビジネスパーソンにとって避けては通れないもの。しかし、悪いことがあったからといって、すべてを自分の失敗と捉えないほうがいい。むしろ「必要のない反省をしない視点も大切」と田代会長は語ってくれた。問題や悩みを持つ人は、失敗を単なる事実と受け止めて、課題だけに向き合ってみてはどうだろうか。
社名 | 株式会社MIST solution |
住所 | 東京都千代田区神田西福田町4番地 D’sVARIE神田ビル4F |
代表 | 田代 貢一郎 |
設立 | 1997年9月1日 |
HP | https://www.mistnet.co.jp/index.html |