株式会社ビーウェル |大亀 雄平

一人で先が見えない中、救ってくれたのは常に人だった。借金は返せば済むが、信用は失ったら取り戻せない。失敗を活かし、関わる人すべてに誠意を持って接していく。

大亀雄平(おおかめ ゆうへい):1982年、兵庫県宝塚市出身。大阪市立大学在学時に株式会社ビーウェルを創業。約2万人の大学生と関わり、就活カフェ、就活イベント、講演会、企業とのマッチングなど、主に就活生の活動を支援。2019年、韓国に「KOREC」を設立し、有能な韓国人の学生支援も手掛ける大亀雄平氏。そんな大亀氏でも決して順風満帆ではなかった裏話を聞くことができた。

無計画に手掛けたビジネスで大失敗

─大亀さんは新卒採用をはじめ、現在はグローバル人材サービスも展開されています。これまでに大きな困難や辛かった経験はありましたか

27歳の時ですね。起業して2年目まではお金もなく、売り上げも大したことなかったんです。当時は真面目にコツコツ事業を育ててました。ところが、24歳ぐらいから飲食店や別事業に手を出し始め、それに伴って人も増員してしまった。すべてが大失敗。良い話は何も考えずに手を出すという、私に経営の軸がなかったことが原因です。

─会社として存続できなくなったということでしょうか

会社は残ってますが、社員の給料をまったく払えない状態でした。もちろん銀行も貸してくれないし、税理士に相談しても相手にされない。人に借りて工面した時期もありましたが、もはや完全な自転車操業でした。20人ぐらいの社員に対し、給料を払えないから指示も出せない状況。いよいよどうにもならないと判断し、それぞれに頭を下げて辞めてもらいました。

失敗して残ったものは数千万の借金

─事実上の廃業に近い形にみなさん納得されたのでしょうか

中には立て直しましょうって言ってくれる社員もいました。当時の私は27歳。社員も若いメンバーで、ファミリーっぽい空気がありましたから。ただ、現実は20社以上の未払いがあり、滞ってる借金も2、3千万はあったんですね。すでに鬱っぽい症状も出てたので、とりあえず一人になりたいと思いました。

「当時は返済のためにどんな仕事でも選ばずやってました。ひどい時は1日200円ぐらいで生きてましたから(笑)」

─その状況で一人となると、かなり辛かったのではないでしょうか

お金がないのも辛いんですが、人がいない状況がとても辛かったです。学生起業の時から人に囲まれてきたのに、一人はこんなに淋しいんだなって。返済のために朝から深夜まで働いて、家に帰れば真っ暗でひとりぼっち。本当に発狂する一歩手前の状態でした(笑)。

元はと言えば、会社をダメにしたのも、一人になってしまったのも私の責任です。ただ、いつかまた人を雇用できる日がきたら、今度は嫌な思いはさせないって決めてました。その想いを土台に成り立ってるのが現在のビーウェルなんです。そういう意味では、あの大失敗も結果的には良い経験だったと思ってます。

再起を決意したある人からの言葉

─倒産寸前で、全員を解雇されるほどの経験から学んだことはありましたか

まず、「お金のことは、お金でしか解決できない」ってことです。仮に私のスキルが高く、どんなに良い人だとしても、お金の失敗はお金を払わないと解決できない。毎月250万の返済だったので、いろいろな仕事をする毎日でした。3年で完済しましたが、我ながらよく頑張ったと思います。

─なぜその過酷さでも投げ出さずに頑張れたのでしょうか

ある日、尊敬する方に道でバッタリ会ったんです。その方は、私の失敗や全社員が辞めたことをすでに噂で知ってました。3千万の借金を伝えると、「お前、どんな経営者になりたかったの?」と言われたんです。私のような27歳なら、3千万以上の家でローンを組む人も珍しくないよねと。それを2、3千万程度の借金で落ち込むなら、経営なんて止めたほうがいいと言われた。この一言は、頭をハンマーで殴られたような衝撃でした。

─厳しくも本質的なアドバイスですね

言われてみれば、私は大きな規模感の経営者を目指してたんです。そのために経営者のかばん持ちもしたし、経営を学んで学生起業もした。それなのに、この程度で病んでるようではダメだと、その方の言葉で吹っ切れました。

失って怖いのは、お金よりも信頼

─大失敗を経験された大亀さんから、失敗した人や辛い思いをしてる人へアドバイスはありますか

後からすべて返ってくるので、失敗を気にする必要はありません。私はかつて受験に失敗してますが、そのおかげで出会えた人たちがいます。今お伝えしたビジネスの大失敗も、そのおかげで人の大切さに気づけました。大切なのは、借金は大変でも返せば終わる、でも一度でも失った人の信頼は、簡単には取り戻せないということ。失敗はともかく、人を裏切るような行為は避けるべきです。私はすべての社員を大切にしてますし、仕事で関わる人にも誠意を持って接してます。

「私の状況を知った大学時代の仲間が、会社を手伝ってくれと声をかけてくれました。金銭面も助かりましたが、彼の心が何より嬉しかったです」

─失敗を糧にすれば良いという考えは確かにおっしゃる通りです。ただ、一般的には辛さが勝ってしまうという側面もあると思います

辛いという気持ちは、その渦中にいる時にだけ持つ感情なんです。みなさんも過去の失敗を思い出せばわかる通り、今は辛くないですよね。前を向いて頑張ってさえいれば、必ず助けてくれる人やチャンスに巡り会えます。結果、乗り越えてしまえば糧になるし、人としても大きくなると私は思う。もちろん頑張る必要はありますけど、失敗したからって悩まなくても大丈夫ですよ。

気の緩みから事業に失敗し、一人になった大亀氏。「何より辛かったのは、数千万の借金より、周りに人がいなくなってしまったこと─」と語る。失敗を活かし、現在はすべてのスタッフに誠意を持って働く環境を整えている。恐るべきは失敗ではなく、そこで歩みを止めてしまうことかもしれない。

社名株式会社ビーウェル bwell co.,ltd.
住所本社  〒542-0081 大阪市中央区南船場 3-7-27 NLC 心斎橋 3F
事業所 〒150-0011 東京都渋谷区東 3-9-19 VORT 恵比寿 maxim11F
代表大亀 雄平
設立2006年10月
HPhttps://bwell.jp/
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